相続対象の賃貸物件の家賃の取り扱い方
相続問題は複雑なことが多いものです。親兄弟であっても相続の事となると、複雑な感情がからみあってスムーズにはいかないケースがあり、親戚などの発言力にまかせて口をはさむ事が、問題を深刻化させる結果となりこともあります。今回は、相続対象の賃貸物件の家賃の取り扱い方について紹介します。
相続対象の賃貸物件の家賃について
家賃については相続分が確定するまでは、共有の財産の中に含まれます。仮に親が亡くなった場合の家賃収入は、「生前」「相続が確定する前」「相続が確定した後」の取り扱いでそれぞれ異なる対応になってきます。
1.「亡くなる以前までの家賃収入」は、亡くなった人の収入として確定申告が4ヶ月以内に必要です。これは、相続の対象となり共有財産として扱います。準確定申告を相続人全員で行なう必要があります。
2.「亡くなってから相続が確定する前の家賃収入」は、相続の対象となる共有財産として扱います。遺産相続の相手が確定するまでは、全員の所得になります。
※「遺言状」がある状況では、相続が発生した時点で、指定された相続人が賃貸物件の所有者として家賃収入も個人の所得として扱います。
3.「相続が確定した後の家賃収入」は、相続した本人の個人財産として扱います。相続人になってからは、賃貸物件と家賃収入が個人の所得対象となります。
遺産分割協議による相続財産の分割
遺産分割協議によってそれぞれの財産の行方が決定しますので、相続人にあたる全員による決定事項として、文書に署名と捺印を行なって全員分の書面を作成します。
財産の分け方
分け方としては、そのまま現物として受け継ぐ「現物分割」や、それぞれを現金に換えた場合の「換価分割」によって分ける事もできます。相続分以上の不動産を相続した場合には、他の相続人に対して現金などで、相続分の代償として支払う「代償分割」や相続の対象を分割せずに共有する方法として、相続分に応じた所有する分を決めておく「共有分割」の4通りがあります。
※賃貸物件の家賃収入は今後も収入が見越せるので、将来的な見込み分も遺産分割の条件に検討する価値があります。
遺言の有無と家賃収入の対処方
遺産相続では、遺言書があった場合には全てに優先します。法定相続人の優先順位では、常に配偶者が半分以上の権利を有する事になり、それ以外では残りを子供達が半分を分けて、子供や孫の直系卑属がいない場合は、親や祖父母が3分の1で配偶者が3分の2となり、親も子もいない場合は配偶者が4分の3で、残りの4分の1を兄弟達が分けるようになっています。
※遺言に異議を唱えた場合には、法定相続分の約半分が遺留分として認められる場合があります。
遺言による分け方
例えば、配偶者には自宅を、長男には賃貸物件を、長女には現金を、と指定する場合もあるので、遺言書がある時点での説明をします。この例では、亡くなった時点から家賃収入が全て長男のものとなり、相続前の家賃収入は共有財産として現金にあたることになるので、長女のものとなります。遺言が無い場合には、先に述べたように遺産分割協議によって、それぞれの所得となります。
まとめ
家賃収入の対処方法は、遺言の有無や遺産分割によっても異なります。家賃収入が生前や亡くなって後からの分は、相続分が誰のものか決定するまでの間で、対応の仕方も誰の相続分なのかが異なるので、期限の締め切りなども含めて注意が必要になります。