相続の3つのパターンと期限付きの「限定承認」「相続放棄」について
【はじめに】
相続には3パターンの選択肢があることをご存知ですか?
まず一つ目はごく一般的に選ばれている「単純承認」、続いて相続人の預貯金などの範囲内で相続する「限定承認」、最後はいっさいの相続を受け継がない「相続放棄」です。
これら3つの相続パターンの中には、期限付きのものが含まれています。
「限定承認」の期限のことを中心に、3つの相続の違いなどについて今回ご紹介していきたいと思います。
【3つの相続パターンについて】
遺産を受け継ぐというと、不動産や預貯金などのプラスの財産を受け継ぐイメージがありませんか?
実は、相続ではプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産やあらゆる権利も含めて承継していくこととなります。ですのでケースによっては負債のほうが大きくて相続者らが背負わなければいけない事態も考えられます。
民法では3パターンの相続の選択肢を定め、相続者全員が最も負担の少ない相続の方法を選べる仕組みになっています。
次の項では、相続の3つの選択パターンについて見ていきたいと思います。
【3つの相続パターンの内容とは?】
まずは、相続者のおよそ8割が選んでいる「単純承認」から見ていきましょう。
「単純承認」は、民法において相続の原則とされているもので、手続きが不要で不動産や預貯金などのプラスの財産と負債などのマイナスの財産を相殺してすべてを受け継ぐパターンです。
また万が一相続が開始された時点で財産を処分してしまった場合も、「単純承認」を選んだと判断されます。また「単純承認」には、承諾までの期限はありません。
続いて「限定承認」ですが、こちは「単純承認」とは異なり、プラスの財産とされる不動産や預貯金などの範囲内で(例:プラスの財産が2000万円ならばその範囲内で)、プラスとマイナスの財産を受け継ぐものです。
万が一プラスの財産とマイナスの財産が同じで額であったとしたら、財産は残りませんが、相続者らがそれ以上の負債を負うことはありません。
また「限定承認」を選ぶ場合は、相続者全員の合意のもと相続の開始日から3か月の期限内に、相続者全員で家庭在番所へ申述の手続きを行う必要があります。
そして最後は財産を何も受け継がない「相続放棄」という選択肢です。「相続放棄」を選んだ場合は、相続人の中から外され負債を負う必要はなくなりますが、プラスの財産を受け継ぐ権利もなくなります。「相続放棄」は、相続者単独の判断で家庭裁判所へ申述することができ、「限定相続」と同じく相続開始日から3か月以内の期限付きで手続きを行う必要があります。
【まとめ】
相続の3つのパターンのうち、「限定承認」と「相続放棄」は、相続の開始日から3か月以内という期限付きで手続きを行う必要があります。
また、預貯金などのプラスの財産の範囲内でプラスの財産もマイナスの財産も受け継ぐ「限定承認」は、一見とても有利なように感じます。しかし、ポイントは相続者全員の合意が必要ということで、その中で一人でも合意が得られなければ手続きはできません。
家庭裁判所で受理されたあとも、さらに複雑な手続きが続くのであまり選ばれていない選択パターンです。
さらに「限定承認」を選んだときに限り、通常の相続の扱いとは違って譲渡所得として課税の対象となりますので、覚えておきましょう。よりよい相続を選ぶことができるように、情報を集めておくことも大切です。