相続法改正後の遺産分割での変更点とは?
【はじめに】
2018年7月に相続法が改正されたことをご存知でしょうか?今回はその改正された相続法についてみてきましょう。
【相続の遺産分割の変更点】
1.遺産分割について
亡くなった人が所有していた金銭や不動産などの遺産を相続する「法定相続人」になる権利を持つ人が複数いた場合に、分割して遺産を相続することを遺産分割と言います。
法定相続人の順位は高い順に、配偶者、子供、孫、ひ孫、父母、祖父母、兄弟姉妹となります。
また、誰がどれくらいの割合で遺産を分割するかという相続分も相続法により決められています。
2.遺産分割についての変更点
改正後の相続法における遺産分割に関する変更点は大きく3つあります。
(1)特別受益の持ち戻し免除の意思表示について
・これまでの法律
複数の相続人がいる場合、相続人の一部が被相続人から贈与などにより特別に利益を得ることを「特別受益」と言います。
特別受益を得た相続人の相続分は通常、特別受益の分を引いて算定されます。これを「特別受益の持ち戻し」と言います。
改正以前の相続法では、特別受益の持ち戻しを免除するという意思を被相続人が示していたときのみ、持ち戻しが免除されることとされていました。
・法改正後
法改正後は、婚姻関係を結んで20年以上が経過した夫婦間で居住用不動産の贈与・遺贈が行われていた場合は、持ち戻しの免除に被相続人の意思は必要なくなりました。
(2)遺産分割前の預貯金の凍結について
・これまでの法律
相続人全員の同意を得られない場合、相続財産の預貯金の遺産分割前の払戻しは認められず、基本的に相続後まで預金は凍結されていました。
・法改正後
法改正後はこの点が変更され、相続人全員の同意がない場合も、葬儀代やその他の相続に関しての経費を預金から一時的に引き出すこと(仮払い)が可能になりました。
仮払いを受ける方法には、金融機関の窓口で直接仮払いを求める方法と、家庭裁判所に仮払いを申し立てる方法の2通りがあります。
(3)遺産の処分を実行した相続人の相続分について
・これまでの法律
改正前の相続法では、一部の相続人が遺産分割前に黙って遺産の処分を実行し、それにより利益を得ているケースがありました。そうした場合でもその相続人の相続遺産はしっかり全て相続できていました。つまり処分された遺産に関しては、遺産分割の対象とされなかったのです。
・法改正後
法改正後は、処分した遺産も相続財産とみなし、処分を実行した相続人の分から差し引くことが可能になりました。そのためには相続人全員(処分した相続人以外)の了承がいります。