借地(底地)の造成・擁壁と修繕費用の負担について

カテゴリ:不動産有効活用

はじめに

宅地の造成を行うとき、場所によっては擁壁工事を実施しなければならないことがあります。
ところで近年、日本では異常気象の傾向が続いており、これまでに経験したこともないような豪雨に見舞われることも珍しいことではなくなってきています。
そして、このような豪雨により擁壁が損壊してしまうようなことも、これまた珍しいことではありません。
そこで今回は、借地権が設定されている底地の擁壁が損壊した場合、その修繕費用は誰が負担することになるのかについて考えてみたいと思います。

造成・擁壁とは?

本題に入る前に言葉の意味を押さえておきましょう。
そもそも「造成」とは何なのでしょうか?
そして「擁壁」とは何なのでしょうか?

造成には「何らかの目的に利用するため土地に手を加えること」という意味があります。
「宅地造成」という言葉もありますので、ここでは「住宅を建築できるように土地に手を加えること」とします。

ところで、造成を行おうとしている土地が崖の上にある場合など段差のあるケースでは、崖や盛土が損壊しないよう土留めの工事を行わなくてはなりません。
その土留めの役割を果たすために構築される壁が「擁壁」です。

擁壁の修繕が必要になったら費用は誰が負担する?

では主題に戻って、豪雨などでこの擁壁が損壊したとき、修繕にかかる費用は誰の負担となるのでしょうか?

これは、原則的には底地の所有者、つまり地主さん側が負担することになります。
底地を借地人に賃貸する契約を締結した以上、地主さんにはその底地を借地人に使用させる義務があります。
そして、民法606条の規定により、その使用にあたって必要な修繕を行うことは賃貸人(つまり地主さん)の義務とされているのです。
ですから、原則的には地主さんが修繕費用を負担することになるわけです。

ただし、契約書の中で「敷地の損壊などがあった場合、借地人は直ちにこれを修繕しなければならない」といった特約を設けている場合には、一定の範囲で借地人に修繕費用を負担してもらえる場合もあります。
ですが、いかなる場合でも修繕費用の全額を借地人の負担とできるかどうかは、微妙なところでありますので、その点は留意しておいたほうが良いでしょう。

最後に

以上で見てきたように、底地に修繕が必要となった場合、原則的には地主さんがその費用を負担しなければなりません。
特に「崖崩れが発生してしまった」というように事が大きくなってからでは、その費用も莫大なものになりがちですし、土地の価値も下がってしまいます。
したがって、大事に至る前に手を打っておくことが重要です。
災害が発生したときに擁壁が損壊する可能性はないかなど底地の状態はしっかりと調査しておくようにしましょう。
また、不明な点があれば放置せず、できるだけ早めに専門家に相談するようにしましょう。

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