相続に関連する念書の書式とは

カテゴリ:相続のこと

様々な契約や取り決めを行う際、場合によっては念書をしたためるケースが見られます。それは遺産相続においても同様です。相続の場で扱われる念書にはどのようなものがあり、その書き方即ち書式としてはどういった点に注意すべきなのでしょうか。確認していきたいと思います。

念書とは

念書は、書いた側が渡す相手に対し、約束等の何らかの義務を果たすことを記した文書です。受け取る側にとっては、書いた側が書面にある通りの誓約をしたという証拠となります。

約束や義務を果たす取り決めとしては主に契約書があり、そちらでは当事者双方共に書面に明記された事項を守る内容となっており、それに同意したという証として双方の署名がなされます。

しかし念書では、書いた側一方のみが署名し、記された事項を守るのも書いた側のみという形式が採られます。

念書自体には法的強制力はありません。しかし念書の不履行が裁判等の訴訟に発展した場合では、過去に確約していた証拠と見做されます。

遺産相続における念書

相続の場で用いられる念書は、相続人同士の遺産の引き継ぎ方に関する内容が主となるでしょう。たとえば、ある相続人が他の相続人に対して、相続権を放棄する旨の念書を差し出すことが想定されます。

この例としては、被相続人が要介護の父、配偶者は既になく相続人は子1と子2で、子1は父と同居し老後の世話全てを引き受け、子2は親元を離れ遠方に居住し父の面倒を一切見ることなく、遺産は父の居宅のみのケースが考えられるでしょう。
この場合、法定相続に則り子1と子2で分割して相続することとなります。しかし分割のため居宅を処分すると父の介護に要した子1の負担は報われず、加えて住む家までも失ってしまいます。それを回避する手段の1つとして、子2に相続放棄してもらうという方法が挙げられるわけです。

このような際に子2が念書を子1に差し出しておけば、仮に後で子2の気が変わって前言撤回し、相続権を主張して係争へと発展する事態を防ぐ抑止力となるでしょう。因みに、被相続人が存命中の相続放棄の念書は、法的に無効と見做されるのでその点は注意しなければなりません。

念書の書式について

効力を持つ念書として機能するためには、どのような書式即ち書き方でしたためられるべきでしょうか?念書には、取り立てて規定の型があるわけではなく、抑えるべき2つのポイントを踏まえておきさえすれば、手書きでも印字でも構いません。

抑えるべきポイントの1つ目としては、どのような内容の念書なのかが明記されていることが挙げられます。相続放棄の念書であれば、内容的に違う意味に捉えられてしまうことのないよう、要点を欠かさず記しておく必要があります。

抑えるべきポイントの2つ目は、署名に関して住所及び氏名を直筆で書くということです。
この部分が印字だと、確かに署名にある本人が記したものという証拠が薄れ、ともすれば偽造ではないかとの疑いが生じてしまいます。直筆とすれば、筆跡鑑定による裏付けを取ることができ、確証性が保てるわけです。

まとめ

以上のように、念書は一方の当事者が相手方に誓約を立てる際に用いられ後々の証拠となる文書であること、相続放棄等遺産相続の場でも取り交わされるケースがあることを踏まえつつ、念書を書く重要なポイントとして、どのような内容かはっきり解るように明記すること、署名に関しては直筆で行うこと、の2点があることを確認してまいりました。参考となれば幸いです。

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