契約書作成等、共有名義不動産売買の流れについて

カテゴリ:不動産基礎知識

所有者が1人のみの一般の不動産とは異なり、複数の共有者が所有権を持つ共有名義不動産。これを売却する際、所有者1人の不動産売買と比較して、売買契約書の記入等手続き上どのような相違点が見られるのでしょうか。確認していきたいと思います。

不動産売買の流れ

不動産売買について、まずは基本であるところの一般的な売買契約の流れを見ていきたいと思います。不動産関連のノウハウに明るいとは言えない一般の方が売却を希望する場合、まずは売買の仲介を果たす不動産会社に依頼することとなるでしょう。

売却希望者即ち売主から依頼を受けた不動産会社は該当物件を査定し、その評価額と売主の希望売却価格を照らし合わせながら売却額を決定します。そして物件に関する情報を公開し、購入希望者から申し出が来るのを待ちます。

瑕疵を含めた物件情報を把握した上で売買に合意する購入希望者が現れれば、その方を買主として、売主買主間の売買契約が締結されます。契約の具体的内容としては、売買契約書の作成および記入、不動産引渡手続き、代金の受領、登記上の抵当権抹消および所有権移転の手続きが挙げられます。売買契約の成立後、売主買主双方から不動産会社に仲介料が支払われることとなります。

共有名義不動産における売買契約

共有名義不動産の売買では、共有者の持分のみ売買するケースと該当する共有物件全体を売買するケースの2通りに区別されます。

共有持分の売買

共有持分のみ売買する際には、前項のような流れとほぼ同一となります。売りたい持分の所有者個人が売主となり、他の共有者から売却の同意を得る必要は原則としてありません。しかしながらこれは、予め共有者各々の持分の境界が明確である場合でなければ困難でしょう。

土地等のように境界線が設定可能な物件であれば、売る前に分筆して他の共有名義不動産から切り離しておく、あるいは共有名義不動産内の持分に応じた境界を事前に定めておく、等の方法で、個別の物件と同等もしくはそれに近い形で売却することできます。

しかしながら、一つの戸建物件を共同で使用するような場合となると、他共有者の反発や買い手の現れにくさ等が想定され、売買契約を成立させるのは現実的に難しいと思われます。

共有名義不動産全体の売買

共有名義物件全体を売買する際には、持分による境界が不明確であっても売りにくさは生じないでしょう。しかしこの場合、不動産会社に依頼する前に、共有者全員の意思をまとめておく必要があります。

全員の意見を売却賛成で一致させておくのは勿論のこと、希望の売値はいくらで提示するか、売却金はどのように配分するか、そして売買にかかる手数料等負担の割り当て等、予め同意の下に決めておかねばなりません。

これらを決定した上で、売却に向けたアクションを起こすこととなります。先に述べた基本的な不動産売買契約の流れと比較すると、共有名義不動産全体の売買で異なる点は、売主が共有者全員となるところでしょう。

そのため、売買契約書の記入においては、共有者全員の署名および実印捺印がなされるのが基本となります。しかしながら、共有者の数が余りにも多い場合等には、共有者の中から1人代表者を立てて、その方が契約書上の売主となる方法が取られます。

その際に代表者は、全共有者各々から署名および実印捺印がなされた委任状を受け取っていなければなりません。代表者が共有者全員の委任状を持つことで、売主側の総意によって交渉に当たるという法的根拠を得ることとなるわけです。

まとめ

以上の内容を要点にまとめると、以下の通りとなります。

〇一般的な不動産売買は、不動産会社などの仲介の下、売主と買主が契約を結んで行われる。

〇共有名義不動産において持分のみ売買を行う場合、その持分について所有権を持つ共有者個人が売主となる。しかし共有の形態によっては売却自体が困難となるケースもある。

〇共有名義不動産全体の売買では、共有者全員が売主に該当する。全員で契約に立ち会うのが困難な場合、共有者の中から代表者を立て、これが他共有者全員から委任状を得ることにより便宜上の売主となる。

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