2019年度の相続税制改正について
はじめに
2019年度の税制改正は、2018年12月14日に大綱が公表され、2019年3月27日に税制改正法が成立しました。
今回は、その中でも相続に関係する改正について見ていくことにしましょう。
個人事業者の事業用資産の納税猶予
個人事業者であった人から事業用の資産を受け継ぎ、相続人が引き続き事業を行う場合には相続税(生前に贈与していた場合は贈与税)が猶予されます。
この場合の資産には、事業用として使用していた「400平方メートルまでの土地」「800平方メートルまでの建物」「青色申告書の貸借対照表に記載されている建物ではない減価償却資産」が該当することとなります。
なお、この制度の対象となるのは、2019年4月1日から2028年12月31日までに相続(もしくは贈与)された資産であり、適用を受けるには一定の条件を満たさなければならないことになっています。
小規模宅地等の特例適用の見直し
「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例」(死亡した人およびその人と生計を同じにしていた親族が事業に使用していた土地を、相続した人が同じ用途で使用する場合、400平方メートルまで土地の評価額を8割減額できる制度)に関して、対象の土地が事業用として使われ始めたのが相続の開始前3年以内である場合には適用対象外となることとなりました。
ただし、当該の土地にあって事業に使われている減価償却資産の額が、土地の額の15%以上の場合には従来通り特例が適用されることになっています。
なお、この見直しは2019年4月1日以降に取得された遺産(ただし2019年3月31日以前から事業用として使用されている土地は除く)の相続税に関して適用されます。
配偶者居住権に関する相続税の評価方法
2018年7月の民法改正で制定された配偶者居住権に関して、相続税に関する評価方法が以下の通り定められました。
(1)配偶者居住権の評価額
「建物の時価」-「建物の時価」×(「残っている耐用年数」-「存続年数」)÷「残っている耐用年数」×「存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率」
(2)配偶者居住権が設定されている建物の所有権の評価額
「建物の時価」-(1)で計算した額
(3)配偶者居住権が設定されている建物の敷地の利用に関する権利の評価額
「土地等の時価」-「土地等の時価」×「存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率」
(4)配偶者居住権が設定されている建物の敷地の所有権の評価額
「土地等の時価」×(3)で計算した額
成人年齢の引き下げに伴う対応
民法改正による成人年齢の引き下げに伴い、相続税の未成年者控除(相続人が未成年者の場合、相続税の額から一定の額を差し引く制度)の対象年齢が「18歳未満」に変更されます(現行は20歳未満)。
加えて「相続時精算課税制度」および「相続時精算課税選択の特例」「直系尊属の贈与に対する贈与税率の特例」「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」の受贈者年齢についても18歳以上に変更されることとなります(現行は20歳以上)。
上記の成人年齢引き下げに伴う対象年齢の変更は、2022年4月1日以降に発生する相続(または贈与)から適用されることとなっています。