相続における限定承認とは
はじめに
親族が亡くなりその財産を相続することとなった場合、通常の財産、つまりプラスの財産の方が多く残っているケースならそれほど難しくはありません。
遺産分割協議を行ったり、内容に問題のない遺言書があるならそれに従ったりして、清算するべきものは清算します。そこから残った財産は誰がどの程度相続するかを決め、その通りに財産を相続すればよいだけです。
しかし、マイナスの財産、すなわち借金(債務)の方が多い場合やどちらが多いかわからない場合には話がややこしくなってきます。
限定承認とは、そのような場合にとることのできる相続手続です。
どのような手続きなのか、以下で見ていくことにしましょう。
限定承認の詳細
限定承認とは、相続した財産を限度としてマイナス財産(債務)も相続するということです。
簡単にいえば、プラスの相続財産額を限度として被相続人の借金返済も肩代わり(相続)するということですね。
ではどのようなケースでこの手続きが用いられるのでしょうか?
一つには、債務の方が多いとわかっていても確保したい遺産がある場合です。
例えば、相続額の合計がマイナス5000万円であったとしても、亡くなった人と同居していた自宅(2000万円)だけは何とか残しておきたいという場合、限定承認の手続きを行えば、2000万円を負担さえすれば自宅を相続することができます。
また、債務の総額が不明確な場合や、相続財産の総額がプラスになるのかマイナスになるのかはっきりとわからない場合でも、限定承認の手続きを行えばプラスの相続分以上に債務を負担する必要はありませんので、この手続きを利用する価値があるともいえます。
手続きの方法
限定承認の手続きをするには、
1.相続人全員が共同で
2.相続の開始を知ったときから3か月以内に
3.被相続人の住所を管轄する家庭裁判所に「申述」(申し立てのこと)
を行います。
なおこの際、「申述書」「相続財産の目録」「被相続人の戸籍謄本(出生時から死亡時まですべて)」「被相続人の住民除票か戸籍附票」「申述人の戸籍謄本(全員分)」などの書類添付が必要です。
また、申し立てを行った後は、5日以内に相続債権者(遺産に対する債権を持っている人)や受遺者(遺贈で遺産を譲り受ける人)に対して官報で「2か月以内に請求の申し出をするように」公示しなければなりません。
同時に、相続人の方が知りえる相続債権者や受遺者に対しては、個別の催告も行う必要があります。
最後に
限定承認は手続きが煩雑で、相続を専門とする税理士に手伝ってもらうことが必須となります。
このため、相続放棄の場合と比較すると費用や時間が多く掛かることになります。
そうなると、先ほど例として述べたような特別な事情がなく限定承認を行う必要がないようなケースでは、相続放棄をした方が費用も安く、時間的にもスムーズに済ませられます。