孫を養子にして相続税対策をする!?
【はじめに】
平成29年にある裁判が行われ、これまでの議論に最高裁が一つの結論を出しました。それはすなわち「節税目的で孫を養子に迎えることは有効か?」ということ。
今までは節税のためだけに養子縁組をするのはいかがなものかという議論が多くあったので、最高裁が出した「節税目的の養子縁組は有効である」という結論は画期的なものでした。
しかし節税目的の養子縁組にはメリット・デメリット両方が存在しています。今回はその仕組みとメリット・デメリットを紹介していきます。
【判決は養子縁組が有効というだけ】
まず最初に断りを入れなくてはいけないのは、上の判決は「孫を養子縁組して節税してもいい」というものではありません。節税のため養子に迎えたとしても「養子として有効である」ということです。あくまでも「養子縁組が有効」と認められたということを忘れずにおきましょう。
【メリット・デメリット】
では実際に孫を養子に迎えた場合、相続税はどうなるのでしょうか?
相続税の基礎控除額の計算方法は
3000万円 + 600万円 × 法定相続人
となっています。この式からわかるように法定相続人の数が増えれば基礎控除額も増えて、相続税は安くなっていきます。
また相続税は累進課税制度という「相続された遺産が多ければ高い税率が課される」システムになっています。逆に言えば相続人1人当たりの遺産額が低くなれば相続税も軽くなっていきます。
ちなみに今の相続税税率は10%~55%とかなり幅があります。しっかりと対策をすれば節税効果も自ずと大きくなってくるわけです。
ではデメリットはあるのでしょうか?
相続が発生するとき、相続人は遺産分割協議に参加することになります。ここで未成年の孫を養子にしていた場合、特別代理人を付けなくてはなりません。これは家庭裁判所に選出をお願いするため、時間費用ともに掛かってしまいます。
次に税制の改正スピードの問題。
税制は時代とともに目まぐるしく変わっていきます。今回のような養子縁組が節税対策として横行するとそれに合わせて税制も変わってくるかもしれません。そうなると将来的には確実に節税できるとは言い切れなくなります。上記のように裁判所の特別代理人選出を待っている間に税制が変わったとなることもあり得ます。
最後に相続人同士の感情があります。
被相続人の節税対策で周りに断りもなく孫を養子にすると、遺産分割協議で他の相続人とトラブルになる場合があります。誰も親族同士の骨肉の争いを望むとは思えませんので、専門家も交えつつしっかりと話し合いましょう。
【まとめ】
いかがだったでしょうか?今回は相続税節税の面から孫の養子縁組を見てきました。
今のところ養子縁組は最大で2人となっており、無制限に相続税軽減ができるわけではありません。また税務署から節税対策のためだけの養子縁組は指摘を受ける可能性もあります。
こういったトラブルを未然に防ぐためにも専門家の意見を聞きながら慎重に節税対策を進めた方がよいでしょう。