相続税を納税できない場合は不動産による物納が可能?
相続税を支払う方法は原則として現金による一括払いですが、一括で支払うことができない場合には延納という分割納付、そして物納という方法があります。どのような方法なのかを理解し、いざという時には検討してみるようにしましょう。
相続税の物納とは?
物納は現金の一括払いや分割により支払う延納で相続税を支払うことが困難な場合、相続財産自体で納付を行うことを可能とする制度です。ただし納税が困難な金額を限度としています。
誰でも物納による相続税の納付が可能なわけでなく、要件を満たすことで許可を得てはじめて可能になる制度です。どのような要件があるのかを確認しておきましょう。
●物納の要件
・一括納付だけでなく延納によっても金銭で納付することが困難な事由があること
・納付の期限までに物納申請書などの必要書類を、税務署に提出していること
・物納に充てる財産は定められた財産、順位で、所在が日本にあること
・物納に充てる財産は物納できない財産(管理処分不適格財産)に該当しないこと、また、財産の使用収益等に制約が課されているなど売却等がしにくい物納劣後財産に該当する場合は、他に物納できる財産がないこと
●物納できない財産(管理処分不適格財産)
国で管理や処分ができず、物納に充てることができない財産は管理処分不適格財産と判断されます。例えば担保権の目的になっている不動産、権利の帰属について係争中の不動産、境界が不明の土地などが該当します。
ただし物納申請時に不適格財産だとしても整備できれば良いので、例えば物納申請後に境界が確定出来れば物納が可能です。
●物納劣後財産
相続財産に現預金がなくても、相続人が多額の現預金を所有している場合や、所得が多く臨時収入が見込まれる場合などは物納が利用できない可能性もあります。
●物納可能な財産の順位
また、物納できる財産の順位は次の通りです。
・第1順位 不動産、船舶、国債、地方債、上場株式など
・第2順位 非上場株式など
・第3順位 動産
物納には優先順位が定められているので、第2順位の財産で物納したくても第1順位の財産があれば第1順位のものを物納する形になります。
ただし複数の不動産を相続した場合は、相続した不動産のどれを物納に充てるかの選択は可能です。
不動産の財産価格は実勢価格ではなく、相続上の評価額です。例えば利便性の高い土地とそうでない土地を相続した場合には、自分にとって条件の悪い土地を物納しても良いということになります。
物納を申請する場合の注意点
一度物納申請した財産については納税者側からは変更できません。そのため的確に選定する必要があります。
ただし、許可がおりるまでに物納から延納に切り替えることや、売買目的で取り下げることなどはできますが、最初に延納申請したものは物納に切り替えることはできないという点についても理解しておきましょう。